「定着率12.5%。それでもドライバーを信じたい話」
運送会社を立ち上げて数年。
ありがたいことに、大手さんから定期便の仕事をいただいてます。
だから、絶対に穴は空けられない。
でも、現場はそう甘くない。
ドライバーが代わりも来ないまま突然いなくなるなんて、珍しくもない。
まるで「誰かがなんとかしてくれる」と思ってるかのように、スッと消える。
もちろん、ちゃんと定着してくれる人もいます。
だいたい6人に1人。定着率12.5%。
事故やトラブルがあって管理者が指導すると、
それをきっかけに辞めていく。
転職すれば信頼もリセットできる時代だからか、
あるいは“ちゃんとした人”はもうどこかに定着しているのか。
そして不思議なことに——
退職理由として「親が倒れた」が、とてつもない高確率で登場する。
もちろん、
中には本当に介護が必要な状況の方もいます。
だからこそ、慎重に聞きます。疑いたくない。
でもそれにしても……出現率が異様に高い。
昨日「父の介護で…」と辞めた人が、
今日には大手運送会社で元気に運行していたという話もあるくらい。
当社は“未経験歓迎”。
もしかしたら大手への登竜門なのかもしれません。
……お父さん、本当に大丈夫だといいんですが。
そんな今を過ごしていると、
ふと思い出す昔のこと。
まだ若かった頃、運行管理をしていた時代。
近距離を走るドライバーが、ある日——
車ごと、忽然と消えた。
連絡はつかず、トラックは置き去り。
完全に神隠し状態。
幸い近場だったので車両はすぐに回収。
でも本人とは連絡が取れないまま、数週間が過ぎる。
給料日。
突然、電話が鳴った。
社長はブチ切れ、全員でなだめる。
「とにかく給料だけは渡そう」と連絡したら、
バツの悪そうな顔で本人が現れた。
言い訳はこう。
「親が倒れて…申し訳なさすぎて電話できませんでした」
……うん、まぁ、
そういうことにしておこう。
で、驚いたのはここから。
「もう一度働かせてください。今度はちゃんと頑張ります…!」
涙目で、必死に頼まれる。
社長も「明日から頑張れよ」と給料を手渡した。
翌日、来なかった。
そして、また連絡がつかなくなった。
今ごろ、どこで何してるのかな。
きっとまた、
“親が倒れた”のかもしれない。