ある日の運行中の出来事。
トレーラーや大型トラックにとって、
一定速度で走るのは安全と燃費の両面で“プロのたしなみ”。
特に大手企業の車両は社速厳守が徹底されていて、
ほんの1km/hのオーバーでも指導対象になる世界。
この日も、
大阪から東京へ向かう途中、元請けの大型トレーラーが
3車線の真ん中を律儀に走っていた。
「ん?80km/h縛りなのに…なんで真ん中?」
よく見ると——
左車線の4トントラックが速度ガタガタ。
70km/hに落ちたと思えば、90km/hに急加速。
おそらく高速に不慣れか、周囲の流れを読めてない様子。
その横で、トレーラーは追い越せず・戻れず、
長時間の並走を強いられていた。
こりゃ気まずいしストレスも相当だ。
よし、一肌脱ぐか。
アクセルを踏み込み、右車線からスッと2台を抜く。
パッシングとハンドサインで合図。
トレーラーの鼻先を軽くかすめながら、4トン車の前に入り込む。
そこからじわじわ減速——78km/hに落とす。
トレーラーが自分の横まで並んできたタイミングで、
ライトをスモールランプに切り替える。
「どうぞ、入ってください」
無言のプロ同士の合図。
トレーラーが前に入り、
ハザードが“多め”に点滅。
(※多めは“深い感謝”の意味。たまにただの消し忘れもあるけど)
こっちも窓から手を上げて返礼。
封印の形で、同じ仕事をしているのがわかる。
だからこそ、わかり合える瞬間がある。
言葉じゃない。
ハンドルとウインカーとヘッドライトで交わす、
深夜のハイウェイでの無言の会話。
それが、
トラックドライバーの“かっこよさ”なんだよな。