若いころの話。当時はまだひよっこドライバーでした。
所持金13円で連泊したり、シートベルト忘れて捕まったり……まぁ色々やらかしてました。
名古屋から東京に向かっていたある夜のこと。
当時はまだ新東名は未開通。
選択肢は大混雑の東名高速か、遠回りの中央道だけ。
当然ながら、
夜の東名は真夏の海水浴場レベルの混雑。
大型トラックがビッシリ並び、車間距離もろくに取れない。
それでも皆、ピタッと一定速度で走り続ける。
まさにプロ中のプロが集う戦場。
今のガラガラな高速とはまったくの別世界。
こちらはずっと緊張しっぱなし。
そんな中、
前のトラックを2km/hの速度差で抜いて、前に入り込む。
この**車間距離が取れるまでの“微妙な時間”**が怖い。
そして事件は起きた。
前を走っていた軽貨物が急減速。
5速全開で走ってるタイプの軽バン、
アクセル抜いた瞬間に強烈なエンブレがかかる——まさにそれ。
右からかわそうとするが、
そこには市場直行・鮮魚トラックが爆走中。
リミッターどこいったレベルのスピード。
無理だ、交わせない。
私はとっさにブレーキを踏んだ。
直後——
後ろの大型トラックがけたたましいホーンを鳴らしながら追い越してきた。
そのまま私の前に入り、ブロック。
抜こうとするとまたホーン。
窓全開で何か怒鳴ってる。
私は「ごめんなさい!」と手を合わせて拝み倒し。
でも、おっちゃんの怒りは収まらない。
これは…やばいなと思い、
後ろにつきながら先輩に電話。
「110番するか、ポッケ入ってやりすごせば?」
(※ポッケ=SAやPAのこと)
なるほど作戦。
すぐに遅めのウインカーでSAにピットイン。
おっちゃん、ついてこない。
逃げ切り成功。
冷や汗で手はぐっしょり。
自販機の冷たいブラックコーヒーを一気飲みしてクールダウン。
そして再び、無言でハンドルを握る。
いまでも、
ブラックコーヒーを飲むたびに思い出す。
あの時の、
あの“苦くて冷たい”夜のことを。