【実話】大雪の日、渋滞という使徒に勝ったのは、自分(とトラック)だけだった話
現役ドライバー時代の、ある大雪の日のこと。
当時の自分は待機時間にエヴァンゲリオンのアニメを見まくっていて、
脳内が完全に“シンクロ率400%”だった。
その日、数年に一度の大雪。
雪国じゃない場所で雪が降ると、
決まって都市機能が即・死ぬ。
荷物は積み上がり、全ドライバー一斉出発。
その瞬間、自分の頭の中に
「始まったな」
という碇司令の声が響く。
思えば自分も、入社早々大型車に放り込まれた。
「新人君、GIGAに乗りなさい」
脳内ミサトさんの声が響く。
たくさん走った今では、車と一体。
ほぼエントリープラグ。
出発後、東名高速はあっという間にどん詰まり。
「パターン赤、渋滞です!」
活動限界まであと3時間——
暖房のLLC(ロングライフクーラー)と一体化して過ごすのもありだったけど、
自分はこの使徒(渋滞)を殲滅することに決めた。
まずは国道1号線へ迂回。
すぐに詰まる。
オペレーター:
「1号線、活動限界です」
次に国道150号線へスイッチ。
ここからは**“静岡を知ってる”という優位性**。
ハンドルをセンターに固定し、ギアを“意志”で操作。
そして問題の箱根。
第3新東京市になる予定だったはずのエリアで、再び活動停止。
他車がデフロック作戦に失敗して路上に停止している。
自分:
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……!」
その瞬間、完全にシンジ君だった。
でも、自分には“あの作戦”がある。
作戦名:「南伊豆包囲突破」
沼津を抜けて、伊豆半島を南下開始。
熱海、河津——
それでもダメなら一周すればいいだけの話。
(トラック乗りの諦め方って、だいたいそんな感じ)
最終的に、河津から相模湾へ抜けるルートに成功。
箱根詰まりを横から突き破った自分の車は、
まるで再起動したエヴァ1号機。
渋滞なき世界。貸切の道路。
ハンドルは軽く、シフトは滑らか。
運転席で**「勝ったな……」**とつぶやく。
現地に到着したのは、夜が明ける頃。
到着車両:自分だけ。
現場スタッフが総出で荷卸し。
30分かかる作業が、数分で終了。
その瞬間、
自分の頭の中に聞こえたのは——
「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」
現場の拍手。脳内のセレモニー。完全勝利。
帰りの車内。
「残酷な天使のテーゼ」が脳内再生される。
自分はエヴァに乗った。
逃げなかった。
使徒(大渋滞)を突破した。
そして眠る。
夕方の便までのわずかな休息。
あの時、寝ていたら——
翌日はノンストップで往復確定。
まさに、
**「残酷な定時の訂正」**になるところだった。